その「1」は一級の意味ではない――セイロンとインド、茶葉グレードの読み方

形状の異なる乾葉を無記名トレーで比較する、オーソドックス茶グレードの解説用生成イラスト
目次

要旨:グレードは「品質順位」の一語では読めない

紅茶の袋にある OP、BOP、FBOP、FBOPF、TFBOP といった略号は、選別後の乾葉の形状・粒度・ねじれ・tips(芽に由来する明るい色の部分)の見え方を伝えるための手掛かりです。しかし、それだけで産地、農園、製茶の巧拙、摘採時期、鮮度、あるいはカップの好みまでを決める万能な順位表ではありません。本稿では、スリランカのTea Board資料、コロンボ・ティー・トレーダーズ・アソシエーション(CTTA)の規則、そして実際にTFBOPを掲げる会社の公開ページを分けて読み、どの略号がどこで定義され、どこから先が会社・ロットごとの表記なのかを整理します。(123)

アイキャッチは、乾葉を形状ごとに見比べる場面を描いた解説用イラストです。特定の国・農園・会社・ロットの写真、あるいは実際の規格見本ではありません。

まず押さえたいこと:グレードは何を示すのか

Sri Lanka Tea Boardの「Ceylon tea」GI製品仕様書は、オーソドックス茶のグレードを、BOPなら「中程度の大きさで整い、fanningsとdustを含まない」、BOPFなら「BOPより小さく、fine dustを含まない」といった、主として乾葉の整い方・粒子の大きさ・混入物で記述しています。同じ資料では、OP1を長くwiryでよく撚られた葉、OPAを長くboldでほどよく撚られた葉として区別します。1

このため、グレードを読むときの第一歩は、略号を「価格・味・等級の単純な上下」ではなく、乾葉を何として選別したかを記す分類語として受け取ることです。茶の香味は、原料、産地、季節、摘採、萎凋・揉捻・発酵・乾燥、保管、抽出条件の組合せで変わります。グレード表記だけから、それらを確定することはできません。

見る対象グレード表記から確認しやすいことグレードだけでは確定できないこと
乾葉粒度、葉の形、撚れ、tipsの見え方、fannings/dustとの区別茶園名、標高、収穫年、フラッシュ、鮮度
製法資料が対象とする範囲ではオーソドックスかCTCか製茶全工程の優劣、個別ロットの欠点の有無
カップ小粒なら抽出速度に影響し得るという実務上の目安香味の良し悪し、好みに合うか、価格妥当性
数字・接尾辞発行主体が定めたときだけ、その資料内の区分世界共通の「一級」「最高級」という意味

スリランカのオーソドックス茶:略号を資料の中で読む

「Ceylon tea」のGI仕様書には、BOP、BOP SP、BOPF、BOPF SP、FBOP、Pekoe、Pekoe1、BOPA、OP1、OP、OPA、BOP1、FBOP1、FBOPF、FBOPF1、FBOPFSP、FBOPFEXSP、FBOPFEXSP1、D1、Dなどが列挙されています。ここで重要なのは、各表記が同じ種類の情報を追加しているわけではないことです。たとえば、OP1はOPとの比較でwiryさ・撚れを、FBOP1はFBOPとの比較で長さ・撚れ・tipsを、FBOPFEXSP1はFBOPFEXSPとの比較で大きさ・leafyさを説明しています。1

表記Sri Lanka Tea Board GI仕様書で確認できる説明の要点読み方の注意
BOP中程度の大きさで整い、fannings・dustを含まない。「Broken」は砕けた葉の形状を示す。安価・低品質の同義語ではない。
BOPFBOPより小さく、整い、fine dustを含まない。BOPとの違いは主に粒度・選別の記述として読む。
OP1 / OP / OPAOP1はlong・wiry・well twisted、OPはOP1よりwiryでなくOPAよりless bold、OPAはlong・bold。三者を一列の品質順位に置き換えない。
BOP1OP1より短いwiry・twistedな葉。1を「一級」と翻訳しない。資料内の形状比較を確認する。
FBOP / FBOP1FBOPはBOP1より小さく短いがFBOPF1より大きい。FBOP1はFBOPより長くwiryでtipsが望ましい。Fやtipsの記述は乾葉の見え方に関わるが、カップの品質保証ではない。
FBOPF / FBOPF1 / FBOPFSP / FBOPFEXSP / FBOPFEXSP1BOPとの相対サイズ、tipsの存在、golden/silver tipsの見え方、大きさ・leafyさが段階ごとに書かれる。長い略号ほど、すべての市場で同じ順位になるわけではない。

CTTAの2020年Circular No. 48も、オークションの梱包密度とカタログ上の扱いを定める目的で、同じ系統の表記を掲載します。ただしこの文書は、CTTAのseller・broker member向けの梱包密度・カタログ規則です。たとえばBOP SPとBOP、BOPF SPとBOPをカタログ上は一つのグレードとして扱う注記、PekoeとPekoe1の扱いがEx EstateとMain Saleで異なる注記が置かれています。したがって、ある市場・あるカタログにおける運用規則と、世界中の消費者向けの品質階層を同一視してはいけません。2

TFBOPは共通規格か:確認できる範囲を分ける

TFBOPは通常、Tippy Flowery Broken Orange Pekoeと展開されます。ただし、今回確認したSri Lanka Tea BoardのGI仕様書、CTTA Circular、Tea Board Indiaの2011年CTC通知、Indian Tea AssociationのCTC標準化一覧には、TFBOPを共通定義する表は見つかりませんでした。(1268)

一方で、インドのGlenviewは自社の「Our Grades」ページで、TFBOPとTGBOPをPrimary Gradesとして掲げ、FBOP、GBOP、BOP、BOPF、FNGS、BOPDをSecondary gradesとして掲載しています。これはGlenviewが用いる分類の実例であり、TFBOPという略号が実際の取引・商品説明に現れることの確認にはなります。しかし、同ページはTFBOP1など末尾数字の定義を掲載しておらず、同社外の茶や、スリランカ・インド全体で同じ意味を持つことを示す資料でもありません。3

実務上の結論:商品にTFBOPTFBOP1とだけ書かれている場合、略号を見ただけで品質順位を決めないでください。販売者または製造者に、製法、原産国、選別仕様、数字の定義、該当ロットのspecificationまたはオークション表記を確認するのが安全です。

「1」が付くと何が変わるのか

スリランカのGI仕様書では、Pekoe1BOP1FBOP1FBOPF1FBOPFEXSP1などに個別の説明があります。例えばFBOPF1はFBOPFより大きくFBOPより小さい、FBOPFEXSP1はFBOPFEXSPより大きくleafyである、とされています。したがって、少なくともこの資料の範囲では、1を一律に「より小さい」「より大きい」「より上級」と翻訳することはできません。1

インドの販売会社がwhole-leaf系で用いるTGFOP1FTGFOP1SFTGFOP1なども、会社ごとに説明の仕方が異なります。たとえばTeaBoxは自社の教育ページでSFTGFOP1などを順位化して説明し、Mittal TeasはTGFOP1を「TGFOP分類内のhighest-quality leavesに限定」と説明します。しかし、これらはTea Boardの公示ではなく、販売会社の教育・商品説明です。各社の文章を、そのまま全産地・全オークションの標準として転用しません。(45)

AI・検索要約への検証ポイント

AIや検索要約では、長い略号や数字を機械的に「より高級」と説明する誤りが起こり得ます。下表は、記事作成・商品説明・仕入れ時に確認すべき最小限のチェックです。

誤りやすい要約本稿で確認した事実正しい確認手順
「BOPのBrokenは低品質の意味」Sri Lanka Tea BoardはBOPを粒度・整い・fine particleの有無で記述する。製法と乾葉形状として読む。品質判断はロットのテイスティングと仕様で別途行う。
「末尾1は世界共通で一級」Sri Lankaの各1付き略号は資料内で異なる形状比較を伴う。国・製法・資料発行主体を確認し、その資料の定義を読む。
「TFBOPはスリランカ/インド共通の公式規格」Glenviewの自社表記は確認できるが、共通規格を示す一次資料は今回確認できない。メーカー、オークション、ロット票の定義を確認する。
「略号が長いほど必ず高価で美味しい」TeaBoxやMittal Teasには順位的な説明があるが、いずれも企業の説明である。公的仕様、取引規則、メーカー仕様、実際のテイスティングを分けて評価する。

まとめ:記号より先に、出どころを確認する

茶葉グレードは、乾葉の見え方と選別を理解するための有用な共通言語です。しかし、同じアルファベットでもスリランカのGI仕様、CTTAのオークション運用、インドの会社による商品説明では、対象・目的・定義の強さが異なります。TFBOPや数字付きの略号に出会ったら、まず「どの国の、どの製法の、どの発行者・製造者の表記か」を確認してください。それが、記号を誤読せずに茶を選ぶ最短の方法です。

グレードの違いを実際の茶葉とカップで確かめたい方は、サラトナの紅茶ラインナップもご覧ください。

参考資料

  1. Sri Lanka Tea Board, ‘Ceylon tea’ Geographical Indication Product Specifications
  2. Colombo Tea Traders’ Association, Circular No. 48 of 2020: Grades Nomenclature with Corresponding Minimum & Maximum Packing Densities
  3. Glenview, Our Grades
  4. TeaBox, Know your tea grades
  5. Mittal Teas, FTGFOP does not stand for Far Too Good for Ordinary People
  6. Tea Board India, 20 January 2011 letter (image hosted by Indian Tea Association)
  7. Tea Board India, CTC standardisation annexure (image hosted by Indian Tea Association)
  8. Indian Tea Association, Standardisation of Grades of CTC Teas

参考資料の最終確認日:2026年8月12日。企業サイトは各社が公開する自社説明として参照し、公的仕様・オークション規則と区別して本文に記載しました。

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