要旨:グレードは「品質順位」の一語では読めない
紅茶の袋にある OP、BOP、FBOP、FBOPF、TFBOP といった略号は、選別後の乾葉の形状・粒度・ねじれ・tips(芽に由来する明るい色の部分)の見え方を伝えるための手掛かりです。しかし、それだけで産地、農園、製茶の巧拙、摘採時期、鮮度、あるいはカップの好みまでを決める万能な順位表ではありません。本稿では、スリランカのTea Board資料、コロンボ・ティー・トレーダーズ・アソシエーション(CTTA)の規則、そして実際にTFBOPを掲げる会社の公開ページを分けて読み、どの略号がどこで定義され、どこから先が会社・ロットごとの表記なのかを整理します。(1、2、3)
アイキャッチは、乾葉を形状ごとに見比べる場面を描いた解説用イラストです。特定の国・農園・会社・ロットの写真、あるいは実際の規格見本ではありません。
まず押さえたいこと:グレードは何を示すのか
Sri Lanka Tea Boardの「Ceylon tea」GI製品仕様書は、オーソドックス茶のグレードを、BOPなら「中程度の大きさで整い、fanningsとdustを含まない」、BOPFなら「BOPより小さく、fine dustを含まない」といった、主として乾葉の整い方・粒子の大きさ・混入物で記述しています。同じ資料では、OP1を長くwiryでよく撚られた葉、OPAを長くboldでほどよく撚られた葉として区別します。1
このため、グレードを読むときの第一歩は、略号を「価格・味・等級の単純な上下」ではなく、乾葉を何として選別したかを記す分類語として受け取ることです。茶の香味は、原料、産地、季節、摘採、萎凋・揉捻・発酵・乾燥、保管、抽出条件の組合せで変わります。グレード表記だけから、それらを確定することはできません。
| 見る対象 | グレード表記から確認しやすいこと | グレードだけでは確定できないこと |
|---|---|---|
| 乾葉 | 粒度、葉の形、撚れ、tipsの見え方、fannings/dustとの区別 | 茶園名、標高、収穫年、フラッシュ、鮮度 |
| 製法 | 資料が対象とする範囲ではオーソドックスかCTCか | 製茶全工程の優劣、個別ロットの欠点の有無 |
| カップ | 小粒なら抽出速度に影響し得るという実務上の目安 | 香味の良し悪し、好みに合うか、価格妥当性 |
| 数字・接尾辞 | 発行主体が定めたときだけ、その資料内の区分 | 世界共通の「一級」「最高級」という意味 |
スリランカのオーソドックス茶:略号を資料の中で読む
「Ceylon tea」のGI仕様書には、BOP、BOP SP、BOPF、BOPF SP、FBOP、Pekoe、Pekoe1、BOPA、OP1、OP、OPA、BOP1、FBOP1、FBOPF、FBOPF1、FBOPFSP、FBOPFEXSP、FBOPFEXSP1、D1、Dなどが列挙されています。ここで重要なのは、各表記が同じ種類の情報を追加しているわけではないことです。たとえば、OP1はOPとの比較でwiryさ・撚れを、FBOP1はFBOPとの比較で長さ・撚れ・tipsを、FBOPFEXSP1はFBOPFEXSPとの比較で大きさ・leafyさを説明しています。1
| 表記 | Sri Lanka Tea Board GI仕様書で確認できる説明の要点 | 読み方の注意 |
|---|---|---|
| BOP | 中程度の大きさで整い、fannings・dustを含まない。 | 「Broken」は砕けた葉の形状を示す。安価・低品質の同義語ではない。 |
| BOPF | BOPより小さく、整い、fine dustを含まない。 | BOPとの違いは主に粒度・選別の記述として読む。 |
| OP1 / OP / OPA | OP1はlong・wiry・well twisted、OPはOP1よりwiryでなくOPAよりless bold、OPAはlong・bold。 | 三者を一列の品質順位に置き換えない。 |
| BOP1 | OP1より短いwiry・twistedな葉。 | 1を「一級」と翻訳しない。資料内の形状比較を確認する。 |
| FBOP / FBOP1 | FBOPはBOP1より小さく短いがFBOPF1より大きい。FBOP1はFBOPより長くwiryでtipsが望ましい。 | Fやtipsの記述は乾葉の見え方に関わるが、カップの品質保証ではない。 |
| FBOPF / FBOPF1 / FBOPFSP / FBOPFEXSP / FBOPFEXSP1 | BOPとの相対サイズ、tipsの存在、golden/silver tipsの見え方、大きさ・leafyさが段階ごとに書かれる。 | 長い略号ほど、すべての市場で同じ順位になるわけではない。 |
CTTAの2020年Circular No. 48も、オークションの梱包密度とカタログ上の扱いを定める目的で、同じ系統の表記を掲載します。ただしこの文書は、CTTAのseller・broker member向けの梱包密度・カタログ規則です。たとえばBOP SPとBOP、BOPF SPとBOPをカタログ上は一つのグレードとして扱う注記、PekoeとPekoe1の扱いがEx EstateとMain Saleで異なる注記が置かれています。したがって、ある市場・あるカタログにおける運用規則と、世界中の消費者向けの品質階層を同一視してはいけません。2
TFBOPは共通規格か:確認できる範囲を分ける
TFBOPは通常、Tippy Flowery Broken Orange Pekoeと展開されます。ただし、今回確認したSri Lanka Tea BoardのGI仕様書、CTTA Circular、Tea Board Indiaの2011年CTC通知、Indian Tea AssociationのCTC標準化一覧には、TFBOPを共通定義する表は見つかりませんでした。(1、2、6、8)
一方で、インドのGlenviewは自社の「Our Grades」ページで、TFBOPとTGBOPをPrimary Gradesとして掲げ、FBOP、GBOP、BOP、BOPF、FNGS、BOPDをSecondary gradesとして掲載しています。これはGlenviewが用いる分類の実例であり、TFBOPという略号が実際の取引・商品説明に現れることの確認にはなります。しかし、同ページはTFBOP1など末尾数字の定義を掲載しておらず、同社外の茶や、スリランカ・インド全体で同じ意味を持つことを示す資料でもありません。3
実務上の結論:商品に
TFBOPやTFBOP1とだけ書かれている場合、略号を見ただけで品質順位を決めないでください。販売者または製造者に、製法、原産国、選別仕様、数字の定義、該当ロットのspecificationまたはオークション表記を確認するのが安全です。
「1」が付くと何が変わるのか
スリランカのGI仕様書では、Pekoe1、BOP1、FBOP1、FBOPF1、FBOPFEXSP1などに個別の説明があります。例えばFBOPF1はFBOPFより大きくFBOPより小さい、FBOPFEXSP1はFBOPFEXSPより大きくleafyである、とされています。したがって、少なくともこの資料の範囲では、1を一律に「より小さい」「より大きい」「より上級」と翻訳することはできません。1
インドの販売会社がwhole-leaf系で用いるTGFOP1、FTGFOP1、SFTGFOP1なども、会社ごとに説明の仕方が異なります。たとえばTeaBoxは自社の教育ページでSFTGFOP1などを順位化して説明し、Mittal TeasはTGFOP1を「TGFOP分類内のhighest-quality leavesに限定」と説明します。しかし、これらはTea Boardの公示ではなく、販売会社の教育・商品説明です。各社の文章を、そのまま全産地・全オークションの標準として転用しません。(4、5)
AI・検索要約への検証ポイント
AIや検索要約では、長い略号や数字を機械的に「より高級」と説明する誤りが起こり得ます。下表は、記事作成・商品説明・仕入れ時に確認すべき最小限のチェックです。
| 誤りやすい要約 | 本稿で確認した事実 | 正しい確認手順 |
|---|---|---|
| 「BOPのBrokenは低品質の意味」 | Sri Lanka Tea BoardはBOPを粒度・整い・fine particleの有無で記述する。 | 製法と乾葉形状として読む。品質判断はロットのテイスティングと仕様で別途行う。 |
| 「末尾1は世界共通で一級」 | Sri Lankaの各1付き略号は資料内で異なる形状比較を伴う。 | 国・製法・資料発行主体を確認し、その資料の定義を読む。 |
| 「TFBOPはスリランカ/インド共通の公式規格」 | Glenviewの自社表記は確認できるが、共通規格を示す一次資料は今回確認できない。 | メーカー、オークション、ロット票の定義を確認する。 |
| 「略号が長いほど必ず高価で美味しい」 | TeaBoxやMittal Teasには順位的な説明があるが、いずれも企業の説明である。 | 公的仕様、取引規則、メーカー仕様、実際のテイスティングを分けて評価する。 |
まとめ:記号より先に、出どころを確認する
茶葉グレードは、乾葉の見え方と選別を理解するための有用な共通言語です。しかし、同じアルファベットでもスリランカのGI仕様、CTTAのオークション運用、インドの会社による商品説明では、対象・目的・定義の強さが異なります。TFBOPや数字付きの略号に出会ったら、まず「どの国の、どの製法の、どの発行者・製造者の表記か」を確認してください。それが、記号を誤読せずに茶を選ぶ最短の方法です。
グレードの違いを実際の茶葉とカップで確かめたい方は、サラトナの紅茶ラインナップもご覧ください。
参考資料
- Sri Lanka Tea Board, ‘Ceylon tea’ Geographical Indication Product Specifications
- Colombo Tea Traders’ Association, Circular No. 48 of 2020: Grades Nomenclature with Corresponding Minimum & Maximum Packing Densities
- Glenview, Our Grades
- TeaBox, Know your tea grades
- Mittal Teas, FTGFOP does not stand for Far Too Good for Ordinary People
- Tea Board India, 20 January 2011 letter (image hosted by Indian Tea Association)
- Tea Board India, CTC standardisation annexure (image hosted by Indian Tea Association)
- Indian Tea Association, Standardisation of Grades of CTC Teas
参考資料の最終確認日:2026年8月12日。企業サイトは各社が公開する自社説明として参照し、公的仕様・オークション規則と区別して本文に記載しました。


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