儲からないものを作り続けることは、農家にも会社にもできません。価格が下がり、費用が上がり、天候が不安定になれば、別の作物へ変える判断は合理的です。
だから、茶からゴムなどへの転作を、単純に「伝統を捨てた」と責めることはできません。問題は、誰が転作を決められるのか、転作によって誰が利益を得るのか、土地に残る人々の仕事と生活がどう変わるのかです。
茶は高く見えても、作る側が豊かとは限らない
店頭で高価な紅茶を見ても、その価格がそのまま茶園へ戻るわけではありません。生産者の受取額には、摘採、加工、梱包、輸送、手数料、輸出、為替、販売の費用が影響します。
ILOの2018年報告は、スリランカの茶生産の70%が約475,000の小規模生産者によるとし、茶業がコスト上昇、価格低下、気候変動の影響を受けていると説明しています。[4]
ここには、プランテーション労働者とは異なる小農の問題があります。自分の土地で働いていても、肥料、剪定、運搬、販売、家族労働の費用がかかる。価格が少し下がるだけで、茶を続ける意味が薄くなる場合があります。
なぜゴムへの転作が選ばれるのか
ゴムは、茶と異なる時間と労働の配分を持ちます。毎日の摘採と工場への搬入が中心になる茶に対して、ゴムは樹木の成長と樹液採取の周期を前提にします。地域の標高、降雨、土壌、道路、労働力、価格によって、向き不向きも変わります。
ただし、「ゴムの方が必ず儲かる」とは書けません。価格、病害、樹齢、再植栽費、労働力、土地の傾斜によって収益性は変わります。転作は、未来を保証する魔法ではなく、ある価格環境に対するリスク分散です。
組合、賃金、休日が普通になるまで
労働者が組合を通じて賃金や休日を交渉できることは、当然のように見えて、歴史的には長い時間を要しました。ILO NORMLEXは、スリランカの賃金制度について、労働者団体、使用者団体、政府を含む三者協議や、茶・ゴム農園の集団協約に言及しています。[10]
ただし、協約があることと、すべての人が同じ生活を送れることは別です。日額賃金、出勤日数、出来高、現物給付、住居費、医療、教育、物価を一緒に見る必要があります。
ILOの報告が示すように、茶業の未来は、賃金だけでなく、女性の雇用、小農の収入、気候変動、サプライチェーン全体の持続可能性とも関わっています。[4]
私たちは安すぎた紅茶を考え直す時期にいる
「高い紅茶を買えば解決する」と単純化することもできません。高い価格が、必ずしも生産者の手取りや労働条件へ十分に届くとは限らないからです。
しかし、安さだけを基準にすれば、価格に表れにくい労働を見えなくします。茶葉を摘む人、工場を動かす人、小農の家族、ブローカー、輸送、包装、販売。どこで価値がつくられ、どこで削られているのかを知ることから始められます。
紅茶を飲むたびに、罪悪感を持つ必要はありません。必要なのは、無関心のまま安さだけを選ぶことを、少しだけやめることです。
産地を知る。製法を知る。誰がつくったかを知る。価格の理由を知る。そのうえで、自分が買える一杯を選ぶ。
紅茶は嗜好品です。だからこそ、選び方に意思を持たせることができます。
サラトナが紅茶を扱う理由
サラトナは、紅茶を単なる安い飲みものとしてではなく、産地と製法と人の仕事が重なったものとして扱います。自社内でティーバッグを製造するのも、飲む人の使いやすさと、茶葉の魅力を両立させるためです。
包装資材も、少しずつ生分解性のものへ変更しています。ASHBYSでは、すでに生分解性包装へ変更しました。茶業のすべてを一社で解決できるわけではありません。それでも、どこを変えられるかを考え、変えたことを伝えることはできます。
一杯の紅茶が世界を変える、と大きく言う必要はありません。
ただ、その一杯をどこから買い、どんな歴史を知り、次に何を選ぶかは、私たち自身が決められます。
真実性評価
| 主張 | 評価 | 注意 |
|---|---|---|
| 小規模生産者がスリランカ茶業で重要な比重を持つ | 高 | ILOの2018年報告の時点情報として記載 |
| コスト上昇・価格低下・気候変動が茶業のリスクになる | 高 | ILO報告の問題提起。現在値とは区別 |
| 茶からゴム等への転作は地域・価格・土地条件に左右される | 中〜高 | 最新の土地統計を追加すればさらに精密化できる |
| 組合や集団協約が賃金・待遇改善に関わった | 高 | 協約が全員の同一待遇を保証するとは限らない |
| 安い紅茶は必ず労働搾取の結果である | 低 | 複数のコスト要因があり、断定不可 |
| 価格を見直す必要がある | 解釈 | 連載の論点であり、読者に判断を委ねる |
第4回 参考文献
[4] ILO, Future of work for tea smallholders in Sri Lanka [10] ILO NORMLEX, Sri Lanka wage and protection of wages comments [11] FAO, The State of Sri Lanka’s Biodiversity for Food and Agriculture [12] Institute of Policy Studies, Sri Lanka Tea Industry in Transition: 150 Years and Beyond連載全体の資料上の注意
植民地期のプランター記録は、農園経営者・管理者の視点に偏りやすい。労働者の移動、家族生活、女性の仕事、住居、組合、賃金、休日については、ILO、労働史研究、法令、組合資料、聞き取りを照合する必要がある。
「茶からゴムへ」という転作も、全国的な一方向の流れとしてではなく、農園、地域、小農、標高、価格、土地利用の違いを確認してから追加する。公開時には、最新統計を確認できない数字を本文へ入れない。
連載案内:本連載では、スリランカ茶業の成立と変化を、土地・資本・労働・制度・価格の歴史として読み直します。次回も順次公開します。


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