生産は減っても、価値はどこへ向かうのか。2026年スリランカ紅茶の現在地と、店での出し方

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一杯の値段の裏側を見る

紅茶を仕入れるとき、つい「今年は高いか、安いか」だけを見てしまいます。けれど、2026年のスリランカ紅茶を数字で追うと、もっと気になる動きが見えてきます。

2026年1〜7月の生産量は1億5,313万7,000kg。前年同期より412万kg、率にして2.62%減りました。一方、輸出量も1億4,351万kgで、前年同期から734万kg、4.87%減少しています。それでも輸出のFOB単価は1kgあたり1,826.16スリランカルピーとなり、前年同期の1,748.51ルピーから上がりました。数量は縮み、単価は上がる。いまのスリランカ紅茶は、そんな局面にあります。

これは「紅茶が足りないから、すべて値上がりした」と単純に言い切れる話ではありません。茶葉の等級、産地、輸出形態、為替、買い手の国によって、実際の価値は変わります。だからこそ、店で扱う人には、安い茶葉を探すより先に、何を一杯の価値として届けるかを決める仕事が残ります。

コロンボのオークション価格と輸出価格は別の数字

2026年第1四半期のコロンボ茶オークション全国平均は、1kgあたり1,153.25ルピーでした。2025年同期の1,179.32ルピーから26.07ルピー下がっています。

ここで注意したいのは、オークション平均と輸出FOB価格を同じものとして比べないことです。オークション価格は茶葉が競りにかけられる段階の指標です。FOB価格は、輸出港での価格です。包装、加工、輸送、販売形態などが関わるため、同じ1kgでも意味が違います。

スリランカ政府統計局の茶生産費調査では、2024/25年の製茶1kgあたりの総生産費は暫定値で1,043.38ルピーでした。内訳を見ると、栽培・摘採などの維持管理費が大きく、製造費や輸送・販売費も積み上がっています。

つまり、オークション平均1,153.25ルピーと生産費1,043.38ルピーを単純に引けば、店の利益が出るという話ではありません。産地から工場、オークション、輸出、輸入、保管、抽出、サービスまで、各段階にコストがあります。飲食店では、茶葉代だけでなく、スタッフが説明できること、注文から提供まで味を崩さないことも商品の一部です。

七つの産地を「名前」ではなく味で覚える

スリランカの茶産地は、中央山地と南側の山麓に広がる七つの地域に分けられています。スリランカ茶局は、地域ごとの気候と地形が茶の個性を生み、地域名の表示も管理された原産地呼称であると説明しています。

たとえばキャンディは標高650〜1,300mほどのミッドグロウン。茶局のテイスターズノートでは、明るく銅色がかった水色で、しっかりしたボディを持つ茶とされています。

この説明は、飲食店のメニューにも置き換えられます。「スリランカ産ブラックティー」とだけ書くのではなく、まずは次のように伝えるのです。

キャンディ。明るい水色と、食事に負けないコク。

難しい専門用語を増やさなくても、お客様は茶の選び方を持てます。産地名を飾りにせず、香り、水色、口当たり、合わせたい料理まで一つにつなぐ。そこに産地を扱う意味があります。

現地の生産は、低地と中地で重さが違う

2026年1〜3月は、ハイグロウン、ミディアムグロウン、ローグロウンのすべてで前年同期を下回りました。なかでもローグロウンは3,597万kgで、全国生産の60.33%を占める一方、前年同期から118万kg減っています。

一方、同じ四半期のCTC紅茶は、2025年の約538万kgから2026年には約661万kgへ増えました。CTCは短時間で濃い味を出しやすく、ミルクティーや大量提供との相性を考えやすい製法です。ここには、家庭でゆっくり味わうリーフティーと、店で安定して提供する紅茶を分けて考えるヒントがあります。

ただし、「CTCなら業務用、オーソドックスなら高級」と決めつけるのは危険です。大切なのは、茶葉の形ではなく、料理、カップ、抽出時間、客単価、スタッフの手順に合っているかです。

喫茶店で失敗しない、三つの提供設計

ここからは、統計の数字から一歩進めて、私なら店の現場で次の三つを整えます。これは特定の産地が公式に推奨する手順ではなく、産地の違いをお客様に伝えるための運用案です。

1. メニューは三種類に絞る

最初から十種類並べると、スタッフもお客様も迷います。まずは、ストレート向けのハイグロウン、食事向けのキャンディなどのミッドグロウン、ミルクティー向けのCTCという三本柱にします。実際の採用茶葉は、仕入れたロットの香味を試して決めます。

2. スタッフの説明を一文で揃える

「こちらはスリランカの紅茶です」だけでは、産地を生かせません。「明るく軽やかなので、焼き菓子と合わせやすい茶です」「コクがあるので、ミルクを入れても香りが残ります」のように、味と利用場面を一文で言えるようにします。

飲食店の紅茶サービスについて、Hospitality Sri Lankaも、茶葉の産地や種類をスタッフが説明できること、抽出方法を理解することの重要性を指摘しています。

3. 抽出をレシピではなく測定で管理する

同じ茶葉でも、湯量、湯温、時間、茶葉量が変われば味は変わります。店舗では、まず一杯分の湯量と茶葉量を決め、タイマーを使い、試飲して記録します。忙しい時間帯こそ、感覚だけに頼らないことが大切です。

特にミルクティーは、濃く出せばよいわけではありません。渋みが先に立つなら抽出時間を短くする、香りが弱いなら茶葉量や湯温を見直す。スタッフが原因と対策を言葉にできれば、味の再現性は上がります。

これから仕入れる人へ

2026年のスリランカ紅茶は、生産量と輸出量だけを見ると厳しい数字です。しかし、輸出FOB単価やCTC、インスタントなどの動きを見ると、価値のつけ方が変わっていることも分かります。量を確保するだけでなく、どの市場に、どの形で、どんな飲み方として届けるかが問われています。

自宅用なら、まず産地を一つ決めて、同じ条件で淹れてみてください。キャンディの力強さ、ハイグロウンの明るさ、ローグロウンの厚み。産地を変えると、紅茶は「濃い、薄い」だけではないことが分かります。

店で使うなら、仕入れの前に提供方法を決めることです。ストレートで出すのか、ミルクを添えるのか、食後に出すのか。茶葉の個性に合わせてサービスを設計できれば、紅茶は料理の後ろに置かれた飲み物ではなく、店の記憶に残る一杯になります。

Saratnaでは、スリランカをはじめとする茶葉を、産地と使い方の両面から考えています。自宅で楽しむ一杯にも、レストランや喫茶店のメニューづくりにも、ぜひTea & Chateaをご覧ください。

参考資料

[1] Tea Exporters Association Sri Lanka, Market Reports

[2] History of Ceylon Tea, Tea Industry Overview of 2026 First Quarter

[3] Department of Census and Statistics Sri Lanka, Cost of production of tea per kilogramme

[4] Sri Lanka Tea Board, Tea Growing Regions

[5] Sri Lanka Tea Board, Kandy

[6] Hospitality Sri Lanka, Taking tea service in the hospitality industry to the next level

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