生産は少し減った。それでも、セイロン茶は次の一杯を探している
茶葉の相場を読むとき、つい「高いか、安いか」だけを見てしまいます。けれど、産地から届く数字を追うと、もう少し違う景色が見えてきます。
2026年7月、スリランカの紅茶生産量は2,126万kgでした。前年同月の2,149万kgから、23万kgの減少です。1月から7月までの累計では1億5,314万kg。輸出は1億4,351万kgでした。
大きな落ち込みとまでは言えません。ただ、茶園の天候、働き手、燃料や資材のコストが、毎月の数字に少しずつ現れている。現地の市場レポートは、気候変動、労働力不足、コスト上昇、生産性の低さを、これからの課題として挙げています。

価格は「店頭の値札」から始まっていない
同じ期間の輸出FOB価額は、1kgあたり1,826.16スリランカ・ルピー、米ドル換算で5.70ドルでした。これは輸出港渡しの価格です。日本に届いてからの運賃、関税、加工、包装、卸や小売の費用は含みません。
つまり、家庭で見る小売価格や、喫茶店が仕入れる価格と、そのまま比べる数字ではありません。それでも、産地側でどのくらいの価値がついているかを考える手掛かりにはなります。
輸出先にも変化がありました。2026年7月の累計で最大の輸入国はトルコ、次いでイラク、ロシア。前年との増減は国ごとに違い、セイロン茶が一つの市場だけに支えられているわけではないことが分かります。
セイロン茶の「名前」は、歴史の中で残された
スリランカの茶の歴史は、いきなり大規模な産業から始まったわけではありません。1824年に中国由来の茶樹がペラデニヤ植物園へ持ち込まれ、試験栽培が行われました。その後、1867年にジェームズ・テイラーがキャンディ近郊のルールコンデラで茶園を始めます。
コーヒーのさび病で農園が打撃を受けたことも、茶への転換を早めました。1873年には、最初のセイロン茶がロンドンへ送られています。1883年にはコロンボで公開オークションが始まり、茶は「作るもの」から「品質を見て取引するもの」へ変わっていきました。
国名がセイロンからスリランカに変わった後も、茶のブランド名にはCeylonが残りました。これは単なる昔の呼び名ではありません。産地の信用を、商品名の中でどう守るかという、長い商売の判断だったのだと思います。
レストランで使うなら、まず「香りの置き場所」を決める
飲食店でセイロン茶を扱うとき、茶葉の説明を増やすだけでは、お客様の記憶に残りにくいことがあります。先に決めたいのは、その紅茶を料理や店内のどこに置くかです。
朝食なら、ミルクを加えても輪郭が残るブロークン茶やCTCを候補にします。午後のストレートなら、産地の標高や季節による香りの違いを見て、軽快な茶葉を選びます。焼き菓子と合わせる場合は、香りの強さを上げすぎず、後口に渋みが残らない抽出を優先します。
たとえば、同じ茶葉でも、提供量を決めてから湯温と時間を調整するだけで、印象は変わります。ポット提供なら、最初の一杯がおいしいだけでなく、二杯目まで香りが崩れないことが大切です。濃く出すことが、専門的なサービスとは限りません。
私は、茶葉を仕入れるときに「どこの茶か」だけでなく、「何分後に、何と一緒に飲まれるか」を考えることをおすすめします。産地の情報は、メニューの飾りではなく、抽出と提供を決めるための道具です。
産地の数字を、一杯の設計につなげる
2026年のスリランカ紅茶は、生産量と輸出量だけを見れば、前年より厳しい局面があります。一方で、輸出FOBは産地の価値を測る一つの手掛かりとして残っています。これから大切になるのは、安さだけで選ばれることではなく、品質と用途をはっきり伝え、飲む場面まで設計することです。
自宅なら、まず同じ茶葉をストレートとミルクで飲み比べてみてください。店なら、料理、焼き菓子、提供時間に合わせて一種類ずつ役割を持たせてみる。そうすると、遠い産地の統計が、目の前の一杯の判断に変わります。
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参考文献
[1] Tea Exporters Association of Sri Lanka, Ceylon Tea History
[2] Tea Exporters Association of Sri Lanka, Market Reports
この記事の数値は、2026年7月までに公表された資料をもとにしています 。FOBは輸出港渡し価格であり、日本国内の小売価格ではありません。


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