焼き物の種類
紅茶を入れるのにポット使う?
そう、ポットで味が変わる・・・。そんなことが普通に起きます。これは、「茶」ならば全て同じです。どれで入れた紅茶を飲んでみたい?
ASHBYSの紅茶に合うのはどれ?イギリスのメーカーを選ぶのも面白いかもしれません。今回は入っていませんが、日本にもノリタケ、大倉陶園、鳴海製陶、ニッコーなどの大手陶器会社があります。機会を見つけてこちらもまとめたいと思います。
サラトナの紅茶も当然味がポットで変わります。ダージリン、アッサム、ウバ、ヌワラエリア、ディンブラー、キャンディー、ルフナ、サバラガムワなどなど。
皆さんはこれを見て、どれで飲んでみたくなりますか?
系統 | 土(素地) | 釉薬 | 焼成の目安 | 紅茶の味への推測 |
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常滑焼(愛知) | 朱泥(鉄分多)/焼締め系 | 無釉〜薄釉 | 1100–1200℃、酸化/還元、数十時間 | 微細多孔+鉄分の影響で渋みの角がやや取れ、口当たりが丸い報告が多い。香りはややソフトに。やわらかい水で差が出やすい。 (ウィキペディア, GINORI 1735) |
萬古焼(四日市) | 紫泥(鉄分・マンガン分) | 無釉〜薄釉 | 1100–1200℃、数十時間 | 同系の焼締めで渋味の収斂が緩むという作り手の主張あり。高香気の紅茶は香りが少し落ち着く傾向。 (meissen.com) |
備前焼(岡山) | 粘性・鉄分の多い土 | 無釉(自然灰釉) | 1200–1300℃、10–14日(薪窯) | 極めて多孔質で熱保持が高い。タンニンの角が取れ、ボディ増。長時間抽出で丸く太い味に振れやすい。 (ウィキペディア, Global Japanese Tea Association) |
信楽焼(滋賀) | 長石粒を含む粗めの土 | 自然灰釉/薄釉 | 1000–1300℃、数日〜10日(穴窯他) | 備前に近い傾向。熱の当たりが柔らかく渋みの出方が穏やか。スモーキーやモルティな紅茶と好相性。 (ウィキペディア, d:matcha Kyoto) |
萩焼(山口) | やわらかい土、貫入多く吸水性 | 釉あり(白萩など) | 1150℃前後、数十時間 | 初期は吸水で味が柔らぐ。香りの立ちは控えめ。ライトボディの紅茶はやや大人しくなる。 (whistlinghound.com) |
唐津焼(佐賀) | 鉄分系土 | 鉄釉・灰釉 | 1200℃前後、数十時間 | 鉄系釉の緩いイオン影響+多孔質で渋味がやわらぎ、ボディ感は増しやすい。香りは少し丸まる。 (PMC) |
美濃(志野・織部等) | 陶石・陶土 | 長石釉(志野/織部) | 1200℃級、数十時間 | ガラス化が進んだ釉肌は比較的惰性(不活性)。香りの減衰が少なくバランス良い。 (KOGEI JAPAN) |
瀬戸(愛知) | 多様 | きせと・瀬戸黒・志野系など多彩 | 1200℃級、数十時間 | 釉の被覆が良いと味・香りはニュートラル寄り。黒釉は温度保持が高く抽出が進みやすい。 (Tezumi) |
益子(栃木) | 地元陶土 | 藁灰・鉄釉など | 1100–1200℃、数十時間 | 釉の被覆が厚めでニュートラル〜ややまろやか。素地粗めのマグは口当たりが柔らかい。 (NonTox U) |
有田/伊万里(佐賀) | 磁器(カオリン主体) | 透明釉+上絵/下絵 | 素焼き~本焼きで最大1400℃級 | 化学的に最も惰性。香り・酸味・渋みの輪郭がはっきり出る。温度降下は速め。 (KOGEI JAPAN) |
九谷(石川) | 磁器胎 | 上絵(800℃前後で焼成) | 本焼き:磁器温度、上絵:800℃級 | 胎は惰性。上絵は直接抽出に触れないため味影響は極小。視覚効果で香りの知覚が上がることはあり。 (ウィキペディア) |
丹波立杭/越前 | 高耐火の石器質 | 無釉〜灰釉 | 1200℃前後、数十時間〜数日 | 備前寄り。骨太い紅茶(アッサム、ウバ)で厚みが出る一方、軽い紅茶は丸くなりやすい。 (TSUKUSHI) |
ヨーロッパ|代表的な窯元・系統(ポット/マグ中心)
系統/窯 | 素地 | 釉薬・特徴 | 焼成の目安 | 紅茶の味への推測 |
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マイセン(独) | 硬質磁器(カオリン) | 釉上/釉下装飾 | ~1400℃ | 最も惰性で味の輪郭がクリア。明るさ・酸味・香りを素直に出す。 (PMC) |
リモージュ(仏) | 磁器(サン=イリエのカオリン) | 白磁・上絵 | 本焼~1400℃、素焼~950℃ | メイセン同様にニュートラル。繊細な香りの紅茶に最適。 (Reddit) |
ロイヤルコペンハーゲン(デンマーク) | 磁器 | 釉下ブルー | 高火度磁器域 | 惰性・薄手で温度降下が速い→軽い紅茶や高香気系に。 (Valley Design) |
デルフト(蘭) | 錫釉陶器(ファイアンス) | 白地+コバルト | 1000–1100℃ | 多孔質の下地+錫釉でやや丸い口当たり。温度保持は中。 (Alibaba) |
ボレスワヴィエツ(ポーランド) | ストーンウェア | 透明釉 | 1200–1300℃ | 緻密で惰性寄り。保温は良好、味は素直。 (PubMed) |
ヴィスタ・アレグレ(葡) | 磁器 | 白磁〜上絵 | ~1400℃ | 惰性。香り保持◎、高温抽出向き。 (Wiley Online Library) |
ヘレンド(洪) | 磁器 | 手描き上絵 | ~1404℃(公開情報) | 惰性。香りと酸味の輪郭が立つ。 (サイエンスダイレクト) |
ジノリ1735(伊) | 磁器 | 上絵 | 高火度磁器域 | 惰性。器厚により温度降下の速さが違う。 |
英国ボーンチャイナ(ウェッジウッド/スポードなど) | 骨灰+カオリン+長石 | 透明釉 | ~1200–1250℃、組成骨灰比率が高い | 薄手で口縁が薄い→軽やかに感じやすい。香り立ち◎。 (ResearchGate, PMC) |
ブラウン・ベティ(英) | 赤土(エトルリア・マール) | ロッキンガム釉 | 1000–1100℃台(一般的土器域) | 壁厚+釉で保温良好。渋みがやや丸い伝統的評価。 (YouTube, e-space.mmu.ac.uk) |
注:焼成時間は窯型で大きく異なります。薪窯(穴窯/登窯)は連続焚きで3–10日、備前は10–14日が典型、ガス・電気窯は数十時間規模が一般的です。 (ウィキペディア, Global Japanese Tea Association)
非陶器素材(比較のために追加)
素材 | 代表仕様 | 味への推測(根拠) |
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ガラス(ホウケイ酸3.3) | 低膨張係数3.3×10⁻⁶/K、高い耐薬品性 | 最も惰性。香り・酸味・渋味の“そのまま”を出す。熱容量が低めで温度降下が速い→短時間抽出に向く。 (schott.com, paulgothe.com) |
樹脂:Tritan(コポリエステル) | BPAフリー、臭・汚れ残りが低い | 惰性寄りだが、擦傷・経年で微臭が乗る可能性。PP等は添加剤の移行や“フレーバースカルピング”で茶香を鈍らせる報告あり。熱湯使用は仕様上可否を確認。 (eastman.com, SSRN) |
鉄瓶(南部鉄器など・無ホーロー) | Fe²⁺/Fe³⁺が微量溶出、水質で変動 | 鉄イオンがカテキン等と錯体形成→渋みの質が変わりまろやかに感じる可能性。軟水で顕著。一方で過多な鉄分・水中鉄は金気を感じることも。 (PubMed, PMC) |
ホーロー鋳鉄 | 内面ガラス質 | 惰性。保温高い(厚手)ため抽出は進みやすいが、金気は出にくい。 |
ステンレス(18-8=SUS304/316) | 耐食性・食品適合。新調×酸性で微量のNi/Crが溶出も、使用で急減 | 味への直接影響はごく小。薄肉で温度降下は速いため、短時間抽出向き。保温目的なら二重構造が良い。 (PMC, nickelinstitute.org) |
目次
味への影響を“科学的に”どう読むか(要点)
- 多孔質・未完全ガラス化の素地(備前・信楽など)は、疎水性有機の軽度吸着や微量の金属イオン交換が起きやすく、渋みの角が取れ、ボディが増す方向に働きやすい=まろやか化仮説。薪窯の長時間焼成は熱容量も増し、抽出温度の安定に寄与。 (ResearchGate)
- 高ガラス化(磁器・厚被覆釉)は惰性で、香りと酸・渋の輪郭がはっきり出る。短時間・高温抽出で明るい杯色が得やすい。 (KOGEI JAPAN)
- 鉄イオン(鉄瓶)はポリフェノールと錯体を作りやすく、官能的に渋味の性質が変わる可能性がある。※食品研究でも調理での鉄移行は確認されているが、濃度や水質で体感は変わる。 (PubMed, PMC)
- 樹脂は材質差が大きい。Tritanは臭い残りが少ない一方、PP等では包装由来化合物の移行・吸着で茶香が鈍る報告がある。 (SSRN)
- **器の物理形状(厚み・口縁・容量)**も知覚に影響。口縁が薄い磁器マグは軽快、肉厚の土ものは円やかに感じやすい。 (MDPI)
使い分けの実務メモ(紅茶のタイプ別)
- ダージリン 1st/アロマ重視:磁器(有田、マイセン、リモージュ)/ガラスで短時間・高温抽出→香りの立ちと透明感を最大化。
- アッサムCTC/ミルクティー:備前・信楽・ブラウンベティなど保温とまろやか化が効く器。
- ウバ/ディンブラ(明快な渋み):磁器で“切れ”を出すか、常滑・萬古で角を少し落とすかで狙いを変える。
- フレーバード紅茶:磁器/ガラス(香料の吸着を避ける)。
出典(主要な根拠)
- 日本の焼き物・焼成:備前の1200–1300℃/10–14日(薪窯)・長時間連続焚きの一次情報。 (ウィキペディア, Global Japanese Tea Association)
信楽・穴窯の数日〜10日規模の連続焚き。 (ウィキペディア, d:matcha Kyoto)
萩の吸水性と貫入の性格。 (whistlinghound.com)
美濃(志野・織部)長石釉・高火度。 (KOGEI JAPAN)
有田(伊万里)磁器の**~1400℃域。 (KOGEI JAPAN)
九谷の上絵焼成(~800℃)**。 (ウィキペディア) - 欧州の窯:メイセン硬質磁器の**~1400℃域。 (PMC)
リモージュ(ハヴィランド):素焼~950℃/本焼~1400℃。 (Reddit)
デルフト(錫釉陶器)1000–1100℃。 (Alibaba)
ボレスワヴィエツ(石器)1200–1300℃。 (PubMed)
ヴィスタ・アレグレ磁器の~1400℃。 (Wiley Online Library)
ヘレンド~1404℃**の記載。 (サイエンスダイレクト)
ボーンチャイナの骨灰組成と低めの本焼温度域。 (ResearchGate, PMC)
ブラウン・ベティ(エトルリア・マール/ロッキンガム釉)。 (YouTube, e-space.mmu.ac.uk) - 素材の物性と味:ホウケイ酸ガラス3.3(低膨張3.3×10⁻⁶/K、耐薬品性・耐熱衝撃)。 (schott.com, paulgothe.com)
ステンレスの金属溶出(新調×低pHで微量Ni/Cr、使用で低減)。 (PMC, nickelinstitute.org)
鉄器からの鉄移行(調理研究)とポリフェノール錯体の一般知見。 (PMC, PubMed)
樹脂(Tritanの臭・汚れ残り低/PP等で香気のスカルピング報告)。 (eastman.com, SSRN)
ちょっとした結論
- 「ありのままの香味を見たい」→磁器/ガラス。
- 「渋みをやわらげ、厚みを出したい」→備前・信楽・常滑・萬古など焼締め/多孔質寄り。
- 「保温重視で長めに抽出」→厚手の土もの/ブラウン・ベティ/二重ステンレス。
- 「香り強い紅茶やフレーバード」→磁器/ガラスで吸着回避。
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本気の内容です。普通に読む本じゃないです。ただ、紅茶教室に関わる方にはぜひ読んでいただきたいです。サラトナが積み重ねてきた知識や経験を本にしています。最初の3冊は紅茶の本です。3冊目の「ジェームス・テイラー」の本はちょっとすごいです。
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